火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)はどんな神様なのか?またどのようなご利益があるのか?
簡単な説明、ご利益、呼び方・表記、祀られている神社について一覧でまとめています。
火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)はなんの神様?
火遠理命(ホオリノミコト)は、日本神話に登場する天孫降臨をしたニニギの子で、「山幸彦」という名で知られている神様です。初代天皇となる神武天皇の祖父。
主にホオリ(ほおり)や山幸彦と呼ばれています。
ニニギとコノハナサクヤヒメの子
「古事記」によると邇邇芸命(ニニギノミコト)と木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤヒメ)の間に3人の子が生まれます。
- 火照命(ホデリノミコト):海幸彦、第一子
- 火須勢理命(ホスセリノミコト):第二子
- 火遠理命(ホオリノミコト):山幸彦、第三子
「日本書紀」本文によると邇邇芸命(ニニギノミコト)と木花咲耶姫命(コノハナサクヤヒメ)の間に3人の子が生まれます。
- 火闌降命(ホスソリノミコト):海幸彦、第一子
- 彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト):山幸彦、第二子
- 火明命(ホアカリノミコト):第三子
「古事記」では三男で、「日本書紀」は次男になります。
山幸彦と海幸彦(海彦山彦)
「海彦山彦」という日本昔話がありますが、その山彦(山幸彦)が火遠理命(ホオリノミコト)にあたります。
「古事記」によると、ホオリは山幸彦と名乗り山の鳥や獣を獲って生活し、ホデリは海で魚を釣って生活していました。
山幸彦(火遠理命/ホオリノミコト)はある時「お互いの道具を取り替えて、いつもと違う仕事をしよう」と言ったので、山幸彦は海へ、海幸彦(ホデリ)は山に出かけました。
ところが、山幸彦は兄・海幸彦の釣り針をなくしてしまいます。
海幸彦が釣り針を返せと言ってきたので、山幸彦は困って一人で海辺で途方に悲しんでいました。
すると、海辺に塩椎神(シオツチノカミ)と出会います。
塩椎神(シオツチノカミ)から「この小舟に乗って海の神様の宮殿に行きなさい。その娘が釣り針を見つけてくれるだろう」と教わり、小舟に乗って海の神様・大綿津見神(オオワタツミノカミ)の家に行きます。
山幸彦はここで大綿津見神(オオワタツミノカミ)の娘・豊玉姫命(トヨタマヒメ)と出会い結婚します。
しかし3年経ち地上が恋しくなり「故郷に帰りたい」と言うと、大綿津見神(オオワタツミノカミ)は失った釣り針を見つけてくれました。
有名な神話「海幸山幸」、後に亀を助けて竜宮城に行く昔話「浦島太郎」のモデルにもなりました。
参考文献:「皇室の起源神話」P. 138〜139「正しく読む古事記」・武光誠(エムディエヌコーポレーション)より
天皇の先祖になる話
失くした釣り針は、大きな赤い魚の喉にあり、オオワタツミは魚の喉から釣り針を取ってくれたのです。
見つけた釣り針を山幸彦に手渡す時にオオワタツミは「私が力をお貸しして、山幸彦さまを瑞穂の国(日本)の主にしてあげましょう」と。
釣り針を返す時、オオワタツミの教え通りに呪文のようなものを海幸彦に言うと、海幸彦はそれ以後魚が取れなくなってしまいました。
仕方なく漁を辞めて、田を開き農業を始めることになったのです。
オオワタツミの言う通りに話を進めたことで、兄・海幸彦(火照命/ホデリノミコト)が従うようなりました。
これにより山幸彦(火遠理命/ホオリノミコト)の子孫が天皇になり、海幸彦(火照命/ホデリノミコト)は隼人(はやと)として、天皇に仕えるようになっていったのです。
今でも「新嘗祭」の時に隼人たちが海幸彦が溺れる隼人舞が演じられています。それは海幸彦が山幸彦に従ったことを伝えるためだと「古事記」は記しています。
神武天皇の父・ウガヤフキアエズが誕生
山幸彦(火遠理命/ホオリノミコト)の子を宿していた海の神様の娘・トヨタマヒメ(豊玉姫命)が地上を訪れます。
天孫の子供を海中で生むべきでは無いと、夫を訪ねてきたのです。
火遠理命(ホオリノミコト・山幸彦)は産屋をつくるの時に「屋根は茅(かや)ではなく、鵜(う)の羽根を集めて葺くように」と命じます。
しかし完成前にトヨタマヒメが産気づきます。その時彼女は「決して産屋のなかを見てはいけません」と。
しかし山幸彦(火遠理命/ホオリノミコト)は妻のことが心配で中を見てしまったのです。
すると、そこには唸りながらのたくっている大きなワニ(鰐)の姿に変身していました。
(※「古事記」の時代にワニ(鰐)はおらず、本当はサメ(鮫)だったという説もあり)
「恥ずかしい姿を見られては地上にはいられません」と、生まれた子を残してトヨタマヒメは海に帰って行きました。
生まれた子供は「鵜の羽根の屋根ができる前に生まれた」という意味の「ウガヤフキアエズ(鵜葺草葺不合命)」という名前になったのです。
火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)のご利益
「古事記」と「日本書紀」から火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)のご利益をまとめました。
縁結び・良縁・夫婦和合
トヨタマヒメ(豊玉姫命)との結婚から、良縁・結婚のご利益があるとされています。
子孫繁栄
天皇の祖先であることから、子孫繁栄・一族繁栄のご利益があるとされています。
海上安全、漁業、航海安全
海の神様・大綿津見神(オオワタツミノカミ)との関わりや、失くした釣り針の神話から、海上安全、漁業、航海安全のご利益があるとされています。
勝負運・逆転勝利
海幸彦(火照命/ホデリノミコト)との争いに勝利したことから、勝負運・逆境からの勝利(逆転勝利)のご利益があるとされています。
また、受験・仕事・スポーツなど勝負事の守護神とされる神社もあります。
調和・和合
陸の神様・山幸彦(火遠理命/ホオリノミコト)と海の神様・トヨタマヒメ(豊玉姫命)の結婚により、調和のご利益があるとされています。
人間関係の調和、対立の解消(和合)のご利益と見ることもできる。
- 縁結び・良縁・夫婦和合
- 子孫繁栄
- 海上安全、漁業、航海安全
- 勝負運・逆転勝利
- 調和・和合
呼び方
一般的な火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)以外にも呼び方は色々あります。書物や神社によって読み方や漢字が変わりますが、すべて同一神です。
呼び方 | 意味 |
---|---|
ホオリ | 一般的な呼び方 |
山幸彦(やまさちひこ)・山彦(やまひこ) | 山幸彦と海幸彦(海彦山彦)の神話より |
火遠理命(ホオリノミコト) | 「古事記」の呼び方 |
天津日高日子穂穂手見命(アマツヒコヒコホホデミノミコト) | |
彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) | 「日本書紀」の呼び方 |
火折尊(ホノオリノミコト) | 「日本書紀」第一の一書、第十段第四の一書での呼び方 |
火折彦火火出見る尊(ホノオリヒコホホデミノミコト) | 「日本書紀」第九段第三の一書での呼び方 |
若狭彦大神(ワカサヒコノオオカミ) | 若狭彦神社の呼び方 |
小若子神(コワクコノカミ) | 梅宮大社の呼び方 |
彦穂々出見命(ヒコホホデミノミコト) | 熊野本宮大社 |
彦火火出見命(ヒコホホデミノミコト) | 神社の呼び方 |
積川神社(いずみあなじんじゃ) | 神社の呼び方 |
彦火火見命(ヒコホホデミノミコト) | 神社の呼び方 |
彦火火出身命(ヒコホホデミノミコト) | 神社の呼び方 |
大阪府に火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)が祀られている神社
神社名(大阪府) | 読み方 | 住所 | ゆえん |
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和泉五社総社 | いずみごしゃそうじゃ | 大阪府和泉市府中町6 | 御祭神の一柱が積川神社(いずみあなじんじゃ) |
壹須何神社 | いちすかじんじゃ | 大阪府南河内郡河南町一須賀628 | 合祀神の一柱が彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
坂合神社 | さかあいじんじゃ | 大阪府八尾市小阪合町2 | 御祭神の一柱が彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
京都府に火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)が祀られている神社
神社名(京都府) | 読み方 | 住所 | ゆえん |
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梅宮大社 | うめみやたいしゃ | 京都市右京区梅津フケノ川町30 | 御祭神の一柱が小若子神(コワクコノカミ) |
火尊天満宮 | かそんてんまんぐう | 京都市下京区風早町559 | 御祭神の一柱が彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
走田神社 | はせだじんじゃ | 京都府亀岡市余部町走田2 | 御祭神の一柱が彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
蛭兒神社 | ひるこじんじゃ | 京都府京丹後市久美浜町湊宮1662 | 御祭神の一柱が火遠理命(ホオリノミコト) |
兵庫県に火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)が祀られている神社
神社名(兵庫県) | 読み方 | 住所 | ゆえん |
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粟鹿神社 | あわがじんじゃ | 兵庫県朝来市山東町粟鹿2152 | 御祭神の一柱が彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
林神社 | はやしじんじゃ | 兵庫県明石市宮の上5 | 御祭神の一柱が彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
奈良県に火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)が祀られている神社
神社名(奈良県) | 読み方 | 住所 | ゆえん |
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阿陀比売神社 | あだひめじんじゃ | 奈良県五條市原町24 | 御祭神の一柱が彦火火出見命(ヒコホホデミノミコト) |
伊豆神社 | いずじんじゃ | 奈良県宇陀市榛原内牧2178 | 御祭神が彦火火出見命(ヒコホホデミノミコト) |
滋賀県に火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)が祀られている神社
神社名(滋賀県) | 読み方 | 住所 | ゆえん |
---|---|---|---|
天孫神社 | てんそんじんじゃ | 滋賀県大津市京町3 | 御祭神の一柱が彦火火見命(ヒコホホデミノミコト) |
野村神社 | のむらじんじゃ | 滋賀県近江八幡市野村町1437 | 御祭神の一柱が彦火火出身命(ヒコホホデミノミコト) |
和歌山県に火遠理命(ホオリノミコト/山幸彦)が祀られている神社
神社名(和歌山県) | 読み方 | 住所 | ゆえん |
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熊野那智大社 | くまのなちたいしゃ | 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1 | 配祀神の一柱が彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
熊野速玉大社 | くまのはやたまたいしゃ | 和歌山県新宮市新宮1 | 相殿神の一柱が彦火々出見尊(ヒコホホデミノミコト) |
熊野本宮大社 | くまのほんぐうたいしゃ | 和歌山県田辺市本宮町本郷1110 | 配祀神の一柱が彦穂々出見命(ヒコホホデミノミコト) |
滝尻王子宮十郷神社 | たきじりおうじぐうとうごうじんじゃ | 和歌山県田辺市中辺路町栗栖川859 | 配祀神の一柱が天津日高日子穂穂手見命(アマツヒコヒコホホデミノミコト) |
ホオリ(山幸彦)についてさらに詳しく