豊雲野神(トヨクモノノカミ)はどんな神様なのか?またどのようなご利益があるのか?
簡単な説明、ご利益、呼び方・表記、祀られている神社について一覧でまとめています。
豊雲野神(トヨクモノノカミ)はどんな神様?
豊雲野神(トヨクモノノカミ)は、日本神話の初期・天地開闢に登場する神様です。「神世七代(かみのよななよ)」の一柱。
一般的にトヨクモノと呼ばれています。
何の神様?
豊雲野神(トヨクモノノカミ)は、別天神(ことあまつかみ=別天地の神)5柱が現れた後に、日本創生に関与した神代七代(かみよななよ)の一柱で、2番目に登場する神様です。
総合では7番目に誕生。
「豊かな雲」、「雲に覆われた豊かな野」という意味を持つ神様であることから、「雲」を神格化した存在と考えられています。
古事記の記載内容
「古事記」を見ると、別天神の次、神代七代(かみよななよ)クニノトコタチの次に誕生したのがトヨクモノと記されています。
トヨクモノも独神だと記されています。(それ以降に誕生する神差は夫婦神)
日本書紀の記載内容
「日本書紀」本文では、天地開闢の跡、国常立尊(クニノトコタチ)、国狭槌尊(クニサツチノミコト)の次の3番目に誕生したと記されています。
天がまずでき上がって、地はのちに定まった。そうしてのちに、神がその中に生まれたもうた。
そのありさまは、開闢のはじめ土壌が浮かび漂うこと、ちょうど魚が水に浮かんでいるようであったが、そのとき、天と地の中間に一つの物が生まれた。
その形は葦の芽のようであって、これが国常立尊(クニノトコタチノミコト)という神となったのである。
つぎに国狭槌尊(クニサツチノミコト)、つぎに豊斟渟尊(トヨクムヌノミコト)という神がなりいでたもうた。
この三柱の神は乾道(あめのみち)すなわち陽の気だけでなりたもうた神である。だから純粋の男神である。
参考:日本書紀(井上光貞・中公文庫・P.85〜86)より
また、一書(第一の一書)には以下のように書かれてあります。
天と地がはじめて分かれたとき、一つのものが虚空(そら)の中に存在した。その形は言いあらわしようもなかった。
やがてその中におのずからなり化り(なり)いでた神がある。
これを国常立尊(クニノトコタチノミコト)という(中略)
つぎに国狭槌尊(クニサツチノミコト)または国狭立尊(クニノサタチノミコト)という。
つぎに豊国主尊(トヨクニヌシノミコト)、または豊組野尊(トヨクムノミコト)または豊香節野尊(トヨカブノミコト)という。
また浮経野豊買尊(ウカブノノトヨカウノミコト)という。
または豊国野尊(トヨクニノミコト)という。または豊齧野尊(トヨカブノノミコト)という。
または葉木国野尊(ハコクニノノミコト)という。また見野尊(ミノノミコト)という。
参考:日本書紀(井上光貞・中公文庫・P.85〜86)より
別名がたくさん表記されています。
「古事記」で出てきた豊雲野神(トヨクモノノカミ)や「日本書紀」の本文で出てきた豊斟渟尊(トヨクムヌノミコト)と同一神であると考えられています。
これ以降は「古事記」や「日本書紀」には登場していません。
豊雲野神(トヨクモノノカミ)はどんなご利益があるの?
豊雲野神(トヨクモノカミ)あまり単独で祀られることはほとんどありませんが、造化三神と同じく「天地生成の根源神」として崇敬される場合があります。
現代においては次のようなご利益があるとされています。
- 天候・気象の安定
- 五穀豊穣・農業の守護
- 事業や地域の発展
- 心身や家庭の調和、家内安全
以上のことから天地の調和、自然の恵み、繁栄の拡大、境界を結ぶ力といった抽象的・根本的な御神徳だと考えられています。
トヨクモノの呼び方・表記
一般的なトヨクモノ以外にも呼び方は色々あります。書物や神社によって読み方が変わりますが、すべて同一神です。
呼び方・表記 | 意味 |
---|---|
トヨクモノ | 一般的な呼び方 |
豊雲野神(トヨクムノノカミ/トヨクモノノカミ) | 古事記での呼び方・表記。 |
豊斟渟尊(トヨクムヌノミコト/トヨクモノノミコト) | 日本書紀での呼び方・表記。 |
豊国主尊(トヨクニヌシノミコト) | |
豊組野尊(トヨクムノノミコト) | |
豊香節野尊(トヨカブノミコト) | |
浮経野豊買尊(ウカブノノトヨカウノミコト) | |
豊国野尊(トヨクニノミコト) | |
豊齧野尊(トヨカブノノミコト) | |
葉木国野尊(ハコクニノノミコト) | |
見野尊(ミノノミコト) | |
豊斟渟命(トヨクムヌノミコト) | 神社による |
豐斟渟神(トヨクムヌノノカミ) | 神社による |
豊雲野神(トヨクモノノカミ)が祀られている神社
トヨクモノが祀られている神社は全国にあまりありません。関西では熊野速玉大社。
神社名 | 読み方 | 住所 | ゆえん |
---|---|---|---|
荒橿神社 | あらかしじんじゃ | 栃木県芳賀郡茂木町小井戸 | 御祭神の一柱が豊斟渟尊(トヨクモノノミコト) |
忌部神社 | いんべじんじゃ | 島根県松江市東忌部町 | 御祭神の一柱が豊斟渟尊(トヨクモノノミコト) |
大内天神社 | おおちてんじんじゃ | 京都府福知山市大内2030 | 御祭神が豐斟渟命(トヨクモノノミコト) |
熊野速玉大社 | くまのはやたまたいしゃ | 和歌山県新宮市新宮 | 御祭神の一柱が豊斟渟尊(トヨクモノノミコト) 下四社・第九殿(十万宮) |
三明神社 | さんみょうじんじゃ | 愛知県犬山市字内久保 | 御祭神が豊斟渟尊(トヨクモノノミコト) |
十二神社 | じゅうにじんじゃ | 大阪府池田市豊島南1-2-9 | 御祭神が天神七代(神世七代) |
埜神社 | のじんじゃ | 愛知県豊田市野口町 | 御祭神が豊斟渟命(トヨクモノノミコト) |
二荒山神社の末社「十二社」 | ふたあらやまじんじゃ(じゅうにしゃ) | 栃木県宇都宮市馬場通り | 末社「十二社」の一柱が豊雲野神(トヨクモノノカミ) |
穂見諏訪十五所神社 | ほみすわじゅうごしょじんじゃ | 山梨県北杜市長坂町上条宮久保 | 御祭神の一柱が豊斟渟命(トヨクモノノミコト) |
宮浦宮 | みやうらぐう | 鹿児島県霧島市福山町 | 御祭神の一柱が豊雲野神(トヨクモノノカミ)・天神七代 |
胸形神社 | むなかたじんじゃ | 栃木県鹿沼市村井町 | 相殿の一柱が豐斟渟神(トヨクムヌノノカミ) |
物部神社の末社「神代七代社」 | もののべじんじゃ(かみよななよしゃ) | 島根県大田市河合町 | 末社「神代七代社」の一柱が豊雲野神(トヨクモノノカミ)。神世七代の13柱を祀る |
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